先月、李登輝氏の追悼記事を書きました。そのとき思った「総統」と「大統領」という言葉についての記事を書きます。
台湾の国家元首は「総統」と名乗っています。
「総統」というと、日本ではナチスドイツのヒトラー総統がいちばん有名でしょう。大統領と首相を兼ねたヒトラーの立場を示す「フューラー」という語の訳語だそうです。
あと、1975年まで独裁体制を維持したスペインのフランコ総統に対しても、「総統」の語が使われていたようです。
そして台湾。蒋介石・蒋経国・李登輝を経て、現在の蔡英文総統まで、台湾・日本ともに「総統」の語が使われています。
ナチスドイツは「第三帝国」といわれ、フランコも終身執権したうえに、死後、王政復古しましたから、この2人は君主に準じる独裁者として「総統」とよばれたようです。
つまり、「君主並みの権威・権力を持った独裁者」が日本における「総統」の定義であると思われます。
台湾の場合、やや事情が異なります。英語の「プレジデント」の訳として中国語圏では「総統」を使うようです。ですから「プレジデント=大統領」のつもりで「総統」を名乗っているものと思われます。
ただ、蒋介石・蒋経国の場合、世襲の独裁者でした。ですから先ほどの「総統」の日本的定義である「君主並みの権威・権力を持った独裁者」に該当するとも解釈できます。ですから日本でも違和感なくそのまま「総統」という語が使われたのでしょう。
ですが李登輝時代に民主化され、現在の台湾は民主主義が定着しています。蔡英文氏に「独裁者」の影はありません。
そうなると、台湾では「総統」のままでも、日本における定義には当てはまらなくなります。台湾で職名が変わっていないので、日本でも以前からの慣用のまま「総統」を使っているが、実態は「大統領」に近い、ということになるでしょう。
一方、「大統領」の語は、幕末に日本で考案された「プレジデント」の訳語のようです。「大」という語のつくところなど、よく考えると時代がかった名称です。
こちらは「共和制国家の国家元首」という定義ができるかと思います。独裁者もいれば民主国家の大統領もいるし、議院内閣制をとる国では、形式的・儀礼的な存在であることも多いようです。
ところで文字通り、「大統領」と名乗っている国は、実は韓国だけです。「대통령=テートンニョン」と読みますが、漢字では「大統領」。こちらは独裁時代の李承晩・朴正熙・全斗煥から民主化後の歴代大統領まで「大統領」を名乗っています。
あれだけ「日帝残滓」を嫌っている国なのに、日本語由来の国家元首名を使っているというのは皮肉なものです。
まあ韓国政府関係者や韓国の政治家・市民運動家がこの日本語で書かれた零細ブログを訪れるとは思えませんが、もし読んだら「日帝残滓清算」の一環として「大統領」の名称変更を求めるかも知れませんね。
もしこの記事を読んだとしても、そんなヤボなことはして欲しくないと思います。でも、この語の由来を知ったら本当に変更運動をやりかねないのが韓国、という気もしないではありません。この零細ブログが韓国の反日運動家の目に触れることがないように、と願うばかりです。
私は韓国の人たちが、この言葉が日本語由来だと知ったとしても、それを受け入れ、「大統領」という言葉に頓着しないで使い続けていって欲しいな、と願っています。