写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

47  古川ロッパ「東京オリムピック」

 東京オリンピックが始まって、それをめぐるゴタゴタやさまざまな議論には興味があるものの、肝心の競技にはさっぱり興味のない私は、テレビ中継も見ませんし、グダグダ連休を過ごしてしまいました。

 

 もったいないことをしてしまいましたが、東京に旅行に行くわけにもいかないし、それより遠くだと、ちょっと日程的に苦しかったのです。一方で別のことをやろうか、という気もしていたのですが、こちらは「まん延防止対策」いわゆる「まん防」の影響でこれまたダメになってしまいました。連休が始まる前はあれこれ有意義な過ごし方を考えていたのですが、ダメでした。

 

 さて、結局グダグダ過ごした連休、またyoutube漬けになっていたのですが、今回いろいろな動画を見ているうちに出てきたのがこの「東京オリムピックなる歌。古川ロッパ、という人が歌っています。

 

 戦前の1940年皇紀2600年の年に東京でオリンピックが開かれることになっていたのですが、日中戦争、さらに第二次世界大戦の勃発でそれどころではなくなり、中止となった、という話は、今回のオリンピックに絡めてどこかで聞いたことがある方も多いでしょう。私もそのこと自体は知っていたのですが、こんな歌があることは知りませんでした。誰かが発掘してyoutubeに載せたのでしょうね。

 

 古川ロッパ(緑波)という人、戦前の喜劇俳優と言うことぐらいしか知りません。リアル世代ではありませんので。ただ、「エノケン榎本健一)、ロッパ」と並び称される戦前の喜劇の大スターだったということは聞いたことがあります。エノケンが大衆受けしたのに対し、ロッパは華族出身(加藤照麿男爵の子)でインテリだったそうで、中間層に人気があったのだとか。

 

 「オリムピック」という歌ではあるもの歌詞全体としては都市風俗的なものが目立ちます。このときのオリンピックは早々に中止になったので、一般庶民までの啓蒙まで行かなかったのでしょうし、この歌は当然ながら公式ソングではなかったのでしょう。

 

 ただ、歌詞の中に真っ先に出てくるのが「マラソン 孫選手」というフレーズ。これは前回1936年のベルリンオリンピックで金メダルを取った朝鮮出身の孫基禎選手のことでしょう。ベルリンオリンピックで戦後も語られ続けたのは、「前畑ガンバレ」連呼の実況放送で知られる水泳の前畑秀子選手ですから、ちょっと意外です。

 

 孫選手はどちらかというと当時の東亜日報という朝鮮語新聞が彼のがつけていた日章旗を消して新聞に写真を掲載したことが問題となった日章旗抹消事件」という政治史的文脈で語られることが多いですから、このようなコミカルな歌で用いられるのは意外でした。ロッパはインテリなので、この人のことを持ち出したのか、それとも当時日本全体で彼が代表的なスポーツ選手と見なされたいたのか、興味深いところです。

www.youtube.com