写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

65  金沢の正月菓子「福梅」の話

 金沢のお正月菓子に「福梅」というのがあります。紅白の梅型の最中(だと思う)の表面に粉砂糖が振りかけてあり、中にはあんこが入っていますが、この餡は、通常のあんこと違って水飴が練り込んであるらしく、少し硬いです。そのぶん日持ちがするのでしょう。梅のお菓子なのは加賀藩前田家の梅鉢の家紋にちなんでいるという説があります。

 

 金沢というところは紅白のものを有り難がる傾向があるようで、鏡餅も紅白のものだったように思います。岡山に来て、2段とも白い鏡餅を飾るようになり、子供心には心なしか物足りなかったような覚えがあります。

 

 さて、「福梅」は、昔、年末によく金沢の祖母が持ってきていました。正月にこれを食べるわけです。もう祖母はとうの昔に死んでしまいましたし、北海道ひとり暮らしが長くなって、ずっと忘れていました。

 

 ですがブログを始めて、だんだんネタに詰まるようになり、あれこれ思い出しているなかで、ふと、「福梅」のことを思い出しました。以前は田舎暮らしだったので、お取り寄せでもしない限り、手に入れることはできなかったのですが、都市部に引っ越して、気が向けば札幌中心部のデパートに行くことができます。三越には全国の菓子を取りそろえているコーナーがあって、あそこならあるかも、と思い立ち、行ってみました。

 

 やはりありました。見ると「諸江屋」のものでした。うちの祖母は金沢の菓子店では「森八」のものを有り難がっており、家に持ってくるのも「森八」の菓子ばかりでした。「福梅」もこの店のものばかりでした。

 

 「諸江屋」も江戸時代創業の落雁の老舗なのですが、祖母に言わせると「森八」とは格が違うそうなのです。「森八」は一度経営破綻し、再興しましたが、今の金沢の人は祖母のように「森八」のことを別格と思っているのかどうかまでは知りません。

 

 三越には「森八」の菓子もおいてあるのですが、今回は「福梅」が目当てなのでこちらを購入。家に帰って食べてみると、上品なおいしさですが、おいしさゆえにパクパク食べられそう。お上品な菓子ですので「もうひとつ」と思ったところで我慢し、少しずつ食べることにしました。時代の変化なのか店の違いか、昔より最中皮も餡も心なしか柔らかいような気がしました。

 

 ということで、大事に少しずつ食べることにしました。改めて、別の日に抹茶を久しぶりに点てて食べてみました。和菓子というのはやはりお茶と合わせて食べるのがいいのです。この「福梅」は単品で食べてもいいし、煎茶と合わせるのもいいと思いますが、落雁なんか、お茶と一緒に食べないとおいしさがわからないでしょう。

 

 久しぶりに食べて、ずいぶん懐かしく、勝手に正月気分に浸っていました。