写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

79  日本三大銘菓(その2)~三種を食べ比べてみました 

  昨日の記事で「日本三大銘菓」というのがあり、金沢森八の「長生殿」、越後長岡大和屋の「越乃雪」、松江風流堂の「山川」である、ということを書きました。先々週と先週末、札幌の三越に行った際、この3種をすべて入手することが出来ました。「山川」に代えて福岡松屋「鶏卵素麺」を含める説もありますが、今回「鶏卵素麺」は入手できなかったので、「長生殿」、「越乃雪」、「山川」の三種を買い求め、食べ比べてみよう、と思ったのです。

 

 高級菓子ですから結構な散財になりましたが、いずれも落雁様の干菓子で比較的日持ちがするとは言え、いつまでも取っておく訳にもいかず、抹茶を点てて食べ比べてみました。

 

 まず、「越乃雪」。正方形、というか、立方体状の白いお菓子です。まず取り出すのに苦労しました。というのは、崩れやすいのです。箸で静かにそっと取り出しました。

 

 口の中に入れると、ホロホロと溶けます。まさに雪の如しです。越後の雪を彷彿とさせる口溶けです。上品な和三盆糖の甘みと融けた後の粉が口に残ります

 

 続いて「長生殿」、こちらは三種の中ではいちばん固いです。紅白二種があり、色は紅白ともに濃い紅色とクリーム色をしています。食べてみると、三種の中ではいちばん固いので、歯ごたえがあり、ポリポリとわずかな音がします。もちろん、お上品なお菓子ですから、乱雑な食べ方はしません。少しずつ食べます。

 

 これもまた、上品な甘さで、これも口で溶けた後に粉が残る感じがします。もちろん、粉っぽいのではありません。かすかな粉っぽさ感とでも言いましょうか。

 

 私は金沢に縁がありますので、「長生殿」は何度も食べたことがあり、落雁といえばこのかっちりと詰まった歯ごたえのある感触のものがいちばん落雁らしいような気がしますが、これは地元びいきでしょうか?

 

 「山川」は、長生殿と同じく、紅白二種ですが、いちばん大きく、割って食べます。包丁で切ってもいいのかも知れませんが、手で割った方が良さそう。このお菓子、他の2種に比べて柔らかいのです。購入するとき、このお菓子だけ賞味期限が短いということを告げられました。厳密には「干菓子」とは言えないのかも知れません。おそらく三種のうちでいちばん日持ちがしないのでしょう。

 

 色は紅白ともに淡く、「長生殿」と並べると、「長生殿」は色が濃いのだな、ということに気づきます。

 

 この「山川」は口に入れても柔らかくてしっとり。マシュマロ、といったら大げさですが、ちょっとそんな感触があります。この「山川」の場合、やはり口の中で上品に溶けていきますが、他の二種と違って溶けたあと、粉っぽさが残りません

 

 どれも同じ落雁とは言え、「越乃雪」の儚げなホロホロ感、「長生殿」のしっかりとしたポリポリ感、「山川」のしっとりとしたマシュマロ感、と三者三様の口溶け感で、どれも甲乙つけがたく、正直なところ、感動しました。お茶とぴったりです。落雁の魅力は、お茶ととともにいただくところにあります。

 

 このようなお上品なお菓子を一度に食べ比べるという贅沢なことをしてしまいましたが、この食感をうまく文章で表現するのが難しく、私のような者が食べ比べ記を書くのはおこがましいように思いました。名文家なら、この三種を食べ比べて、どんな文章を書くのだろう、という思いを馳せながら、今こうして書いています。

 

 それぞれ、長岡藩の牧野忠精、加賀藩の前田利常、松江藩の松平不昧(治郷)にゆかりのある大名菓子だったそうですが、江戸時代は私のような庶民が食べるものではなかったのでしょう。

 

 三種のうち、「山川」が「三大銘菓」から外されることがあるのは、このお菓子だけが一度絶えたお菓子で、大正時代に復元されたものだからなのでしょうか。味や風情の面では、他の二種に勝るとも劣らないように思います。

 

 この三種を食べ比べて、一回の記事にまとめる、というのはずいぶんもったいないことのように思います。本当は三回に分けて連載しようか、とも考えていたのですが、食べ比べ記、ということで、一回の記事にまとめてしまいました。もっとあれこれ調べて、三種それぞれの記事を書きたかったのですが、十分な時間もなく、それぞれのお菓子に由来を示すしおりが添付されており、それを読んでもらえればいいかな、と思います。

 

 最後に一言、「ああ、もったいないことをした」です。これからもう一服お茶を点てて、残りを食べます。もちろん、三種類それなりの量がありますから、これから賞味期限が来るまで大切に食べていこうと思います。