今回の自民党総裁選で興味深かったのは、朝日新聞が掲載していた党員党友票の結果が、都市部で高市早苗氏、地方が石破茂氏、とはっきり分かれていたことです。これまでの自民党の総裁選では派閥単位での票の動きが注目され、地方ごとの得票傾向を指摘する記事を見かけることはありませんでした。
ただ、石破氏の得票傾向に関してはさほど不思議ではありません。石破氏は人口の最も少ない鳥取県の選出で、農水相や地方創生相を務め、いいか悪いか、どの程度の実績があるかは別としても、地方問題に熱心、という印象があり、また、地方に熱心に足を運んでいたようなので、地方で得票が多いのは理解出来ます。
これに対して高市氏の票が都市部で多い、というのがどういう事情なのか、これがわかりません。単に石破氏の得票傾向の裏返しなのか、といえば、そうではないように思います。むしろ都市部ならば小泉進次郎氏の得票が上回っていても不思議ではないように思います。ネットでの妙な高市支持と同様、得体が知れないのです。
従来、特に55年体制下では、自民党は地方で勢力が強く、都市部で弱い、とされてきましたが、21世紀になってその傾向に変化が見られ、自民党が「都市型保守」(私はこれを「都市型右翼革新」ではないかと思っています)と「地方型保守」の2つに分化する傾向がここではっきりと見え始めてきたのかもしれません。
都市部の場合、たとえば関西での「維新現象」、東京での「石丸現象」といった目新しくて、ある種先鋭的な主張を伴ったものが支持される傾向があります。高市氏の支持層にもそれと似たような傾向があるのかもしれません。
あるいは都市部の方が外国人を身近に見る機会が多いので、排外的ナショナリズムが先鋭化し、それが高市支持につながっているのかもしれませんし、あるいは都市部では野党も強いので、それと対立点を明らかにするため、より先鋭的な右派的主張が受けるのかもしれません。
いくつか私の仮説を提示してみましたが、これが今回の総裁選特有の傾向で、一時的なものなのか、それとも意外にも根深い路線対立があり、党内再編、あるいは党分裂にまでつながっていく伏線なのか、どちらなのだろうか、まだこの傾向を分析して解説した論考を見ていないので、是非知りたいところです。