写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

59  福岡松屋利右衛門の「鶏卵素麺」を実食

   博多駅のお土産物店を覗くと「博多通りもん」という饅頭が一番幅をきかせていて、その他様々な菓子があって目移りしますが、片隅に「鶏卵素麺」を発見。博多では、まずこれを購入できないか、と思っていたのです。

 

 江戸時代から続く、「日本三大銘菓」ということで、金沢の「長生殿」、越後長岡の「越の雪」と並んでいるそうです。ただ、松江の「山川」を三つ目に数える場合もあり、こちらの方が同じ落雁系のお菓子ですからおさまりはいい気もします。ただ、「山川」は大正時代に復刻されたお菓子らしいので、鶏卵素麺の方が連綿と続いてきたという意味では伝統菓子と言えるのでしょう。また、南蛮渡来の伝統菓子ということで捨てがたい気もします。

 

 「長生殿」・「越の雪」・「山川」は札幌の三越で入手して食べ比べたことがありますが、この「鶏卵素麺」は入手出来ませんでした。ということで久しく食べていなかったのです。

 

 氷砂糖を煮立てて作った蜜の中に、卵黄を細く流し入れて素麺状に固める、というお菓子で、原材料は鶏卵と砂糖だけのシンプルさです。ただ、食べにくいし、ねっとりしていて甘ったるく、現代の味覚にはやや合わないかもしれません。

 

 ですから福岡の銘菓としてはメジャーになり切れず、片隅で細々と売られているにすぎなくなってしまったのでしょう。 

 

 そして高いのです。今回の旅行ではあちこちでお土産を買いまくりましたから、一番安いパック入りの鶏卵素麺「切り出し」というものを買います。950円。本当は「たばね」という鶏卵素麺を短く切って昆布で結んだものが一番食べやすいのですが、こちらは高かったので断念し、安い少量パックにしました。おそらく端の切り落としの類でしょう。パックの中にに無造作に入れられています。

 

 この「鶏卵素麺」、約20年前、福岡に親がいた時にお土産として時々買っていたものです。当時は松屋菓子舗というところが作っていて、そのころから少量で高かったような印象があります。

 

 そしてこの「松屋」という菓子屋、2012年に一度、経営不振で自己破産したそうです。この菓子、私は好きでしたが、甘ったるくベタベタしますので、一般には時代遅れで売れなくなっていたのでしょう。

 

 それでも惜しまれたのか、鹿児島の「かすたどん」を作っている薩摩蒸気屋というところに買収されて再建したそうです。そしてそれとは別に、「13代松屋利右衛門」う名前で創業家が、ほそぼそと生産を再開した、ということでした。ですから今は「松屋」を名乗って鶏卵素麺を作っているところが2つあるということですね。

 

 今回博多駅で見つけた鶏卵素麺は松屋利右衛門」のものでした。この13代松屋利右衛門氏、検索すると酒気帯び運転で逮捕されたとかいう記事が出てきたり、ホームページでも格好つけた自分の写真を載せていたり、なんだか微妙ですが、まあ鶏卵素麺づくりを維持してるだけでもよしとしましょう。

 

 ということで、北海道に帰宅後、鶏卵素麺を食べてみました。抹茶と合わせて食べてみましたが、「珍味」の類で、なかなか美味しく、捨てがたいものあります。

 

 以前はかなり甘い、という印象がありましたが、再建後、味に改良が加えられたのか、昔より甘さは控えめになったようで、ベタベタ感も控えめになっています。ただ、その分、錦糸卵に糖蜜が絡みついたもの、という感じも強くなっています。

 

 でも、こういう伝統菓子は抹茶に合いますね。甘ったるいくらいがお茶菓子としてはいいのでしょう。

 

 まあ、北海道にいる私が今後購入するのは至難ですが、今後も絶えることなく、伝統を受け継いでほしいものです。