私が生まれて数年後、アニメの「サザエさん」が始まったようです。最近気づいいたのですが、その頃の「サザエさん」の家庭環境と私の家の家庭環境がそっくりなのです。カツオとワカメがいないだけで、後は酷似しています。
サザエさんは24歳という年齢設定で、3歳のタラちゃんという息子がいて、実家である磯野家で親と同居しているが、マスオの姓である「フグ田」を名乗っている。夫のマスオは妻の実家に同居している、という設定です。これ、実は昭和40年代の我が家の状況にそっくりなのです。そして私が「タラちゃん」に相当します。
こんな話を持ち出したのは、最近の少子化問題で、「少子化の原因は若者の所得が低く、実家から出ていけないからだ」という議論を目にしたからです。この議論と昭和40年代の我が家やサザエさんの「磯野家」の設定を比較すると、ずいぶん筋ちがいな議論をしているな、という感じがします。
子供を育てる際、祖父母がいた方が何かと都合がいいし、経済的にも効率がいいでしょう。いわゆる「拡大家族」ですね。我が家はその後、父親の転勤で核家族化しましたが、昭和後期の核家族化でも子育てをなんとかやっていけたのは、祖父母(特に祖母)の存在と兄弟姉妹(特に姉妹)の相互扶助があったから、という論考を読んだことがあります。
それならば三世代同居の「拡大家族」への回帰があっても良さそうですが、現実はそうなっていない、むしろ核家族が高齢化しただけで「子供部屋おじさん」が問題になっていたりする。これはどういうことなのでしょうか?
現在の私が「サザエさん」をアニメとして楽しむのではなく、リアルにこのような生活をする、という観点で見ると、相当息苦しいような生活に思えてしまうのです。サザエさんに「青春」はあったのか、マスオさんには自分の居場所があるのか、という目で見てしまいます。「幸福」な昭和の家庭のあり方が、私には幸福には見えない。いや、アニメを見ている分には幸福そうなのですが、時間的にも空間的にも、自分はこのような生活をリアルな世界で送れそうもない、と思ってしまうのです。
「タラちゃん」としては「サザエさん」の世界を生きて来たはずの私ですが、「サザエさん」や「マスオさん」にはなれない、と思ってしまうのですね。
少子化、あるいは非婚化、ということが問題になるとき、とかく経済面の困難さや子育ての大変さが論点になりますが、私は非婚を選択している者として、そもそも、結婚や家庭に対する価値観が違って来ていることを指摘しておきたいと思います。
「タラちゃん」のなれの果てとして一人暮らしを送っている私からすると、「サザエさん」のような生き方をしてみたい、それが幸福である、という価値観が戻ってこないと、少子化問題は解決しないのではないかと思うのです。
実は少子化の原因は「晩婚化」「非婚化」であると言われるのですが、私のような人間からすると「サザエさん」夫婦のように生きたいと思えない、というところに原因があるような気がしてならないのです。
「サザエさん」的でない家庭のあり方で少子化問題が解決することはあるのでしょうか?私は最近の家庭を舞台にした漫画やアニメを見ていませんが、そういうモデルの提示があるのでしょうかね?