写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

21  3日目午後 金沢のごり佃煮店「白山屋」へ行く(2024年8月12日)

 金沢に来て、 「ふらっとバス」に乗った目的は、「白山屋」という鮴(ごり)佃煮の店を訪ねるためです。 

 

 この店、金沢市内中心部を流れる犀川をやや上流部に遡った「城南二丁目」というところにあります。

 

 今から30年以上前の話になりますが、大学生だったときの夏休みに、金沢の生家、というか、当時は祖母が住んでいたのですが、そこに滞在して、朝夕金沢の街を散歩しまくったことがあります。昼は暑いので朝か夕方に歩くのですが、家の近くを流れる「鞍月用水」という用水が犀川のどこから分流しているのか、その起点まで歩いてみようと思ったのです。

 

 その途中、住宅街の中に突如、「鮴」(ごり)の看板を掲げた古い商家に出くわしました。商店街ではなく、住宅街の中に突如として現れたので、強く印象に残り、あの店は何だったのだろう、幻だったのか、と非常に気になっていたのです。

 

 その後金沢に行っても、やや中心街から離れた住宅街にあるので行く機会がなく、今度金沢に行く機会があったら探してみよう、と思ったまま、長い年月が経ってしまったのです。

 

 そしてネット時代になり、あの辺りを検索してみると「白山屋」という、ごり佃煮の店があることがわかりました。ただ、金沢では「ごり佃煮」「くるみ煮」が名物で、有名店がいくつかありますが、この店の場合、名前を聞いたことがありません

 

 ホームページもなく、「金澤老舗百年會」というサイトに紹介があるだけ。(しかも現在会員リンクには載っていませんので、参考までにリンクをつけておきます。)

 

www.kanazawa-cci.or.jp

 

 それによると、天保年間創業なのだとか。江戸時代から続く相当な老舗ですが、広告宣伝も、駅やデパートなどのお土産コーナーに製品がおいてあるのを見たこともなく、ネット上でも、訪問記やレビューの類が見当たらないのです。一つだけブログで試食記事が見つかった程度。

 

 中心街からやや離れた住宅街という場所柄、地元民の普段使い以外に訪れる客はいそうもありませんが、30年経っても営業はしているようで、潰れずに残っているのが不思議です。気になって仕方ありません。

 

 ということで、わざわざバスに乗って訪れることにしたわけです。バスを降り、早速スマホの地図をたよりに訪ねてみることにしました。小路を入ると小さな交差点の脇に「白山屋」が見つかりました。昔の印象よりはこぢんまりしていますが、やはり古い商家です。

 

 ところがこの店、営業しているのかどうか、外からではわかりません。「営業中」の札もないし、外から見るとショーケースの中は空っぽ。この日は祝日だったので、もしかしたら閉まっているのかも、と危惧していたのですが、そうかもしれません。外からではまるでやる気が感じられないのです。

 

 ですが店の中には明かりがついています。ということで躊躇しましたが、せっかく来たのだからと、思い切って扉を開けてみます。開きました。呼び鈴が鳴って少し時間がかかりましたが、愛想のよいおばさんが出てきました。

 

 ショーケースは空でしたが、脇の棚には鮴の佃煮やくるみ煮など、4種類ほどの商品が数個ずつ置かれていました。その中から、定番の「ごり佃煮」と「花くるみ」の小パックを購入。1つ70グラムで各500円ですから、デパートやお土産物屋に売っている有名店のものより安いです。変体仮名で「ごり」と書いてある薄みどりの紙袋に入れてくれました。

 

 しかし、観光客も来ないような住宅街の片隅でなぜ長年営業を続けられているのだろうか、やはり不思議に思います。近所の固定客だけではやっていけるとは思えないですし、そもそも店頭にある商品が少なすぎます。

 

 卸でもしているのか、旅行が終わった後に、ネットで他店の下請けをしているという説を見かけましたが、とにかく不思議な店です。

 

 店の人に、どういう販路があるのか、聞いてみればよかったのですが、聞く勇気がなく、聞きそびれてしまいました。それはちょっと後悔。

 

 とにかく30年以上気になっていた店を見つけ、商品を買うことができたので気が済みました。