写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

72  安倍元首相暗殺に思う(その1) 

 安倍元首相が暗殺されてしまいましたね。少なくとも今回の参議院選挙や今後の政局には影響を与えることになるのでしょうし、ひいては日本の将来にもっと大きい影響を与える出来事になるのかもしれませんが、現時点ではまだそこまでのことは予断を許しません。

 

  今日はとりあえず、「日本の要人警備はこの程度だったのか?」という感想を持ったことを書いておきたいと思います。

 

  戦前には、明治の伊藤博文をはじめ、原敬、5・15事件の犬養毅、2・26次官で斎藤実高橋是清、という首相経験者が暗殺されています。ほかにも浜口雄幸が襲撃をきっかけに死去するという事例がありました。1930年代を中心に、政治家を狙ったテロがかなり多かったわけですが、戦後は岸信介が襲撃されケガをしたのと、社会党浅沼稲次郎委員長が刺殺されたという程度で、首相経験者が暗殺された例はありませんでした。

 

 この岸・浅沼両氏の事件も1960年代初め、60年ほど昔の話です。その後政治家が暗殺された例はいくつかないわけではないのですが、安倍氏ほどの大物政治家が公衆の面前で暗殺される、という例はなかったわけです。

 

 実は20年ほど前、小泉内閣が全盛期のころ、一億総中流が崩れたといわれ、経済・社会状況が70年前の1930年代初頭に似ているような気がして、そこから「もしかして小泉氏は殺されるのではないか?」と思ったことがあります。この時は私の予想は外れたのですが、それは警備のレベルが70年前とは格段に違っていて、小泉氏に恨みを持ったとしても、襲撃するチャンスがない、実行しても目的を達せず捕まるだけ、襲撃不可能、と思われて実行しようとする者が現れなかったからではないかと思ったものでした。

 

 今回、その警備に関する神話が崩れたわけです。私は日本の警備のレベルはこのような事件を不可能にしているレベルであると思っていたので、その意味でショックでした。「元」首相であるということで現職よりも軽度の警備レベルだったのか、それとも長年このような事件が起こっていなかったことで油断があったのか、その両方なのかもしれません。襲撃現場の映像を見ましたが、背後の警備が手薄、また、近づいてきている時点で警備が動いていないのは警備の手落ちだったのでしょう。もっとも、まさか手製の銃を持っていたとは思わなかったのでしょうが。

 

 安倍氏は長期政権を率い、またこの個性からして、現職の岸田氏以上に毀誉褒貶の激しい政治家で、岸田氏以上に狙われやすい対象でもあったと思います。今回の事件には政治的・思想的背景が乏しいようで、昭和期の暗殺事件よりは対象の原敬の暗殺事件に近いように思いますが、それでもこのような事件が起きると、模倣犯、とりわけ政治的・思想的背景を持った模倣犯が出てこないとも限りません。

 

 これが単発的な事件に終わるように、日本の警察当局は野党政治家を含めて要人警備を徹底してもらいたいものだと思います。