美輪明宏さんが亡くなりましたね。91歳だったとか。先日の菅原洋一氏に続く大往生ですが、この人はちょっと余人に代えがたいところがあり、亡くなっても何もおかしくない年齢であるにもかかわらず、驚きは大きかったですね。100歳ぐらいまで生きるのではないかと思っていました。
「シスターボーイ」と言われた頃から、日本のゲイカルチャーを先導してきた人物であり、この人とカルーセル麻紀氏がいたからこそ、日本でゲイ・トランスジェンダーが広く知られることになったのだと思います。
この界隈の人には大きな影響を受けた、あるいは感謝している人も多いでしょう。
昔、昭和の頃は「色物」とされてNHKなどには出してもらえなかったのでしょうが、晩年はLGBTへの評価も大きく変化し、紅白にも出て大きな話題になっていましたね。
個人的な思い出としては、もう30年ぐらい前だと思いますが、私が千歳に住んでいたとき、職場の人に誘われて、この人の講演会を見に行ったことがあります。講演会の内容は覚えていませんが、最後に「おぼろ月夜」が何かの唱歌を歌ってくれたことが印象に残っています。やはりもっと本格的に歌を聴きたかったですね。
この人の歌と言えば、これも30年以上前だと思いますが、NHKのテレビで「老女優は去りゆく」という歌を聴いたとき、大きな衝撃を受けました。
セリフ入り、語り物の歌芸としては、和物の三波春夫「俵星玄蕃」とならぶ洋物(シャンソン系でしょうが)の最高峰の芸だと思いました。
舞台女優の一生を、語りを織り交ぜて、演劇のように歌っていく。聞き終わったあとに映画や舞台を1本見終わったくらいの感慨がありました。私の表現力では筆舌に尽くしがたいですが、至芸としか言いようがないものでした。
ただ、NHKで最初に見たときは最後に老女優がヨタヨタと舞台袖に消えてゆく、というものでしたが、youtubeで見るといくつかのヴァージョンがあって、消えようとして、あるいは一度消えた直後に舞台に戻って喝采を浴びる、というパターンもあります。私としては消え去りパターンを最初に見たので、こちらの方がいいように感じ、戻ってくるパターンには違和感、というか、余計に思えました。でも、何度も見るとこれはこれでいいのかも、とは思ったのですが。
このように、この人の芸は鬼気迫る強烈さがありますが、ただ、ちょっと「過剰」という言葉が頭をちらつくことがあります。先ほどの「老女優は去りゆく」の舞台に戻ってくるパターンもそうですし、何よりも紅白歌合戦に2012年に初出場して「ヨイトマケの唄」を歌って話題になったのはいいとしても、その後4回も出て同じような演出で歌ったのは興ざめだったというか、「過剰」だったのではないかと思います。
まあしかし、この「過剰さ」が美輪さんの一つの魅力となっていた、ともいえそうです。あの時代に男が女の道を歩み、石を投げつけられるような目にも遭ったそうですから、それを跳ね返す、過剰なくらいのエネルギーがこの人の生き方には必要だったのでしょう。
リンク切れになりがちなので、最近は歌の記事にも動画リンクを張らなくなっていたのですが、この歌の場合は先々リンク切れになるおそれがあっても、貼っておいた方がいいでしょうね。消さないでほしいですが。
ご冥福をお祈りします。www.youtube.com