写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

02 ハヌマーンと5人の仮面ライダー

     タイ関連動画2つめです。実際にタイに行く前から、憂き世の憂さ晴らしにYouTubeの動画を見ている日々でしたが、あれこれ見ている中で、1975年にタイで作られた、という仮面ライダーの映画が出てきてびっくり。ハヌマーンと5人の仮面ライダーという映画らしいのですが、とにかくそれがデタラメなのです。日本の仮面ライダーの上映権を得たところがそのまま上映すればいいのに、タイ風に勝手に改変してしまったらしく、すさまじい内容の映画になっています。

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 タイ風の音楽の後、オープニングは最初だけ日本でとったシーンで、その後、タイの街を仮面ライダーバイクに乗って手を振っているシーンが延々と続きます。できたばかりのは当時タイでは最新鋭と思われる道路や橋を横のタクシーをよけながら走る仮面ライダー。すると横にタイ風の宮殿が映ります。

 

 歌は、日本の仮面ライダーの歌をタイ語で歌っているのですが、これが最後の部分で声が裏返るというシュールな代物。

 

 そのあと、全裸の女を拷問して生き血を採取する、という、子供向けにはあり得ないシーンが出てきます。正視に耐えません。(14分前後ですが、物好きの方以外は見ない方がいいと思います。)17分30秒頃にある、インド圏の伝説のヒーロー、猿の化身の「ハヌマーン」の登場シーンはウルトラマンそっくり。

 

 ということで飛ばし飛ばしに見ましたが、まだ発展前のタイの伝統的な家々の中を造形がお粗末なライダーや怪人がバイクを乗り回したり、戦ったりします。

 

   グサッとフォークのような武器で突き刺して血が流れるシーンが結構多いです。日本の仮面ライダーは怪人が爆発しますが、血だらけにはなりませんよね。挙げ句の果てに仮面ライダーたちは死んでしまい、そこに「ハヌマーン」が登場して生き返らせる。

 

 それで敵方とハヌマーンが巨大化して戦い、ハヌマーンが勝って敵を血だらけにして仕留め、マヌケな顔で歓喜の踊りを踊る、という、なんとも訳がわからない、真面目に見ると超駄作、仮面ライダー黒歴史、といわれる代物です。ハヌマーンの登場シーンで流れるなんとも間抜けな音楽が今も頭から離れません。日本の仮面ライダーの音楽やシーンとタイ風の音楽やシーンがデタラメに編集されてつなぎ合わされています。

 

 日本の仮面ライダー、特に昭和ライダーは子供向けでチープだ、といわれる方もいるでしょうが、それと比べても、もう一段あきれてしまう内容です。しかし、見方を変えれば極めて興味深いです。タイの町並みや人々の様子、40年前のタイではまともなヒーロー映画を作る力もなかったのでしょうが、それでも無理矢理タイの人々に合わせようとしてこんな具合になってしまったんだろうなあ、と「涙ぐましい努力」に思いが至ったり。

 

 このデタラメぶりが、今になるとかえってパロディーのような趣があります。むしろ無理矢理でもこういう映画を作るパワーが貧しい社会で「生き抜く力」なのかもしれないと思ったり。大笑いしてしまいました。
 

 デタラメでも、危なくても、うさんくさくても、インチキでも、無理矢理必死でやっているところにパワーが生まれるのかもしれませんね。馬鹿にするのはたやすいですが、それが今のアジアの繁栄の礎になっているのでしょう。