写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

04 2日目南廻線(2019年3月29日)

 新幹線の左営駅、つまり在来線の新左営駅から今度は在来線で南廻線の旅です。今度は莒光号という急行に乗ります。751列車台東行き。この名前は中国の昔の故事で滅亡寸前に追い込まれた国が莒州というところで持ちこたえ、失地を回復したという故事によるもので、独裁時代に大陸反攻の意味を込めて名付けられたものでしょう。

 民主化しても在来線に独裁時代の国是の列車名が残っているのは韓国の「セマウル号」と似ています。新幹線は割引でも1000元ぐらいしますが、こちらは294元で300元を切ります。ちなみに特急は「自強号」といって電車かディーゼルカー

 

 待っているとホームに入線。台鉄はオレンジ色の列車が多いのですが、この列車の先頭の電気機関車は南海の「ラピート」を模した濃紺色に塗っています。台鉄と南海電鉄の友好車両のようで、横に「Nankai」と書いてあります。客車列車で、台湾製。乗り込むとロマンスシート、日本では乗れないスタイルの車両です。

 窓側をとったつもりでしたが、ちゃんと窓側、しかも景色のよい進行方向右側でした。新幹線がつまらなかったので、「これに乗りたかったんだよ-」と思います。9:16発のはずですが、5分ぐらい遅れました。電気機関車からディーゼルに付け替えたのか、ちょっとガクンときましたが、付け替えに手間取ったのでしょうか?

 出発後、まず、景色の良さそうな親水公園の類が見えます。また機会があったら、一度行ってみたいです。そして高雄市内に向かいますが、高雄市内も数年前に地下化されたようで、地下線を走ります。正義とか民族とか言うスローガンのような駅名があります。高雄駅を過ぎ、地上に出ます。在来線なので新幹線の窓から見えたてっぺんが赤い木は花が咲いているのだとわかります。あれが火炎樹でしょうか?乗車率は満席に近いです。横にはおじさんがいます。

 

 高雄市内の様子はわからなかったのですが、郊外を走ります。外は暑そうですが、停車駅で若い兄ちゃんの駅員が線路を渡ってこちらのホームに来るのが見えたりします。台湾の最南部は意外にも水田が少なく、椰子畑です。途中で大きな川を渡りますが、水害で鉄橋が流されて途中で途切れたのが見えます。列車が走っている橋は付け替えたもののようです。

 椰子畑、というのがあるんだ、と思っていましたが、途中に見渡す限り一面椰子畑のところがあり、目が釘付けになりました。天気は快晴、あまりに面白い風景に口をあんぐり開けて窓に額をつけっぱなしでした。椰子畑は椰子を植えているだけでなく、下にも植物が植えてあります。どうもバナナのような芭蕉系の植物のようでした。
 
 地図がないのでどこの駅がどうだったか、は覚えていないのですが、途中高架線でそこそこ大きな町中を突っ切るところもあり、ビルが極彩色の寺院になっているのが見え、また、台湾最南部の開放的な町並みが見えたりもします。町歩きをしたら面白いかも、と思います。途中で青い旧型の普通列車ともすれ違いました。台湾の普通列車はステンレスのロングシート車両でつまらなさそうなのですが、一本だけ旧型車を残しているそうで、それに遭遇したわけです。

 どうも駅をことごとく近代化しているようで、かなりの駅が工事中でした。工事している人が見えますが、暑いのにご苦労様なことです。こっちは寒い北海道が嫌になって南国に来て冷房車から窓外を見て面白がっているのですが、工事の人は台湾の暑さが嫌で北海道にでも気晴らしに行きたい、と思ってるのでは、と考えてしまいました。

 

 椰子畑が途切れると養魚場です。ウナギかなあ、と思うのですが、最近は台湾ウナギを見かけませんから、違うものを養殖しているのかもしれません。今度は見渡す限り一面がコンクリートで仕切られた養魚場で、これも壮観。養魚場一区画ごとに一つずつくらい水をかき混ぜる装置があり、水しぶきを上げて、涼しげです。これまた日本では見られない風景で感動し、またまた目が釘付け。一瞬でも目を窓から離したくないと思いました。

 

 その後何かの果樹園がしばらく続き、いよいよ南廻線。これは台湾一周鉄道で最後に出来た区間。断崖絶壁であるため、出来たのは90年代だそうです。高台の上から椰子並木、その向こうに砂浜、そして太平洋が見えるところに出ます。これが絶景。来て本当によかったと思います。それまでカーテンを閉めていた客が多く、なんてもったいない、と思っていたのですが、南から東向きに変わったこともあり、後ろの女性客もカーテンを開けて携帯で写真を撮っています。このあたりでは撮影をしている人を何人も見かけました。

 

 そして長大トンネルが続き、急峻な谷を分け入ります。どうも複線化工事をしているようです。山あいに駅があってときどき停まりますが、中には駅を作ったものの乗降客がいなかったのでしょう、廃駅になったものもあるようでした。相変わらず工事をしている人が結構います。車販が来たので今度は台湾製のものを飲もうと思い、スポーツドリンクを買いました。

 窓のてっぺんに太陽が見えます。太陽はこんな高いところまで昇るものなのか、と思います。そうは言っても、窓からかろうじて見えるわけですから、夏になるともっと高いところに昇るのでしょう。そして再び海岸に出て、海沿いに走ります。道路も整備されてきたようで、立派な道路が並行。中には非常に立派な高架道路が海に張り出しているのと並行する区間もありました。道路も線路も整備中のようで、ここでも工事が目立ちました。

 そうこうしているうちに台東地区に入り、12:44台東着。これだけでも台湾に来た価値があった、と思いました。快晴で座席も最高の位置。ベストの状態で乗れたので堪能しました。車窓がこれだけ面白かったのは本当に久々です。もう一度乗りたいですが、二度目というのは感動が半減するものです。どうしようかな、と思います。