写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

07 2日目釜山駅周辺とKTX特室車(2019年4月28日)

 釜山から今度はKTX(韓国新幹線)でソウルへ。その前に、釜山駅の周辺を短時間で観察。釜山駅自体はKTX開業で建て直され、全く変わっています。まだ工事中。おそらく80~90年代の札幌駅のように、常にどこか工事しているという状態なのかもしれません。

 

 昔、駅のすぐ一本奥に道路の真ん中の露店で野菜や魚を売っている草梁市場というのがありました。船で釜山についてすぐ、大都市の駅のすぐ近くに露天市場があって異国を感じたものです。ですが今度行ってみるとアーケードが出来ています。相変わらず道の真ん中で魚を売っていますが、アーケードがあるだけで野趣がそがれてしまいます。日本だと商店街のアーケードを撤去する傾向がありますが、韓国はつけている段階なのでしょう。突き当たりの川では暗渠を復元する工事をしていました。

 

 今度は駅前地下街です。ここも昔来たとき、地下街なのにやたら小汚くて、発展途上国の地下街だなあ、と思ったものです。さすがに改装されているのではないかと思っていました。覗いてみます。すると、そこまで小汚いという印象はなかったのですが、それでも雑然とした雰囲気で、多少の改装程度しかしていないのでは、と思いました。それと日曜なのに閉めている店が多いです。港町はだんだん内陸部が中心になっていく傾向がありますが、釜山も内陸部の西面なんかに中心が移っているのかもしれません。

 

 釜山駅は大改装されていましたが、それでも駅前に物売りとか、ホームレスの人とかが結構います。大邱やソウルでも、地べたに座ってお金を恵んでもらう箱を置いている、我々がイメージするとおりの「乞食」を見かけました。台湾でも台北駅にホームレスらしき人がいましたが、どうも韓国の方が多そうです。一般的には暖かいところの方がホームレスが多そうですが、どうしたことでしょう?

 KTXに乗ります。KTXは2004年開業、4年前の訪韓時は、ソウルだけだったので、指をくわえて眺めるだけでした。今回初めて乗ります。これもインターネット予約をしていました。ですがこれがうまくいかなかったのです。韓国の予約システムは台湾在来線と違って決済前に座席指定が表示されます。釜田までのムグンファ号は一度通路側が指定されたので取り直し、窓側にしました。KTXの場合、この座席が大問題なのです。

 

 KTXはフランスのTGVの技術を使っているそうで、動力集中式、在来線乗り入れ可ということになっています。日本嫌いなのと在来線乗り入れ技術の関係でそうなったのでしょう。ところが椅子の配慮がなく、固定式の「集団見合い方式」で、中央から半分は後ろ向きで座るということです。椅子の座り心地もかつて乗った在来線特急のセマウル号よりかなり悪いそうです。座り心地は仕方ないとして、せっかく乗るのに逆向きは嫌です。ところが予約を取ると逆向きの席が指定されます。

 

 何とかならないかと思っているうち、日本語ページではなく、韓国語ページだと座席配置図を見て予約できるということがわかりました。見てみると、後ろ向きの席はガラガラなのに前向きの席は数席だけしか空いていません。ところが、言語の壁などもあって、逡巡しているうちにわずかな空席も埋まってしまいます。日曜夕方ですから、普通車全体が満席になりそうでした。

 

 この際、やむを得ず特室車、つまりグリーン車に乗ることにしました。これなら日本語ページでも2-1配列の1人席が確保できます。もちろん前向き。ですが値段が83700ウォン。約8400円で、何のため格安航空券を買ったのかわからなくなります。普通車との値段差が2~30000ウォン程度なのと、日本の新幹線よりかなり安いこと、それに今更やめることも出来ないので、思い切ってこれを予約しました。格安航空券に安宿、ムグンファ号と節約したのに、特室車と韓国語教室で帳消しです。
 
 釜山駅は橋上駅舎の下なので暗いです。乗るとデッキに補助座席があります。フランスのTGVに乗ったとき、満席でこの補助椅子に座ったことを思い出しました。やはりフランス式です。特室車は間接照明で薄暗い雰囲気。一人席に座ってリクライニングを倒します。

 

 出発。17:00発KTX150列車。出るとすぐ長いトンネルなのか地下線なのか、そこを通ります。在来線だと洛東江という大陸的なゆったり流れる川のほとりを走り、大陸に来たなあ、という感慨を催すのですが、それがありません。一瞬だけ外に出てまた長いトンネル。走行音はやはり新幹線と多少違う気がします。

 

 女性の客室乗務員が来てナッツとクッキーを配ります。ですが、その乗務員、カジュアルな格好なのはともかく、ゼッケンをかけていて、よく見ると、背中に「乗務員差別撤廃」とか、「長時間勤務縮減」とか、「人権」とか書いてあります。非正規労働者なのか、組合員だかわかりませんが、以前はかっちりとした制服で、何もしないで恭しくお辞儀をして往復するばかりだったのに、また極端な国だな、と思います。

 

 なお、水は特室車の自販機の「特室」ボタンを押すとペットボトルがタダで出ました。あと、車内販売は来ませんでした。これも寂しいですね。景色もトンネルと山間部という感じで予想していたもののパッとしません。東大邱駅に近づくと在来線と共用になり、停車。今度は降りません。

 東大邱を発車してしばらくして、ようやく洛東江を渡ります。これだけが大陸的だなあ、と思いますが一瞬です。車内にはテレビモニターがあり、景色もパッとしないのでなんとなく見ていると、ニュースヘッドラインで「北海道」と出てきました。何だろう、と気になってもう一度出てこないかな、とチラチラと見ます。だいぶたってから北海道で5.6の地震。被害報告なし、と出てきてホッとします。

 

 外に目をやると、パッとしない風景で、東海道新幹線関ヶ原から滋賀県付近の感じです。ただ、中小都市や山間部でもむやみに高い20階から30階建てのアパート群が林立しているのが奇妙です。これは大都市にかぎらず、東海線でも見かけました。あと、キリスト教会の尖塔が目立ちます。台湾は椰子の木と極彩色の廟でしたが、韓国は高層マンション教会の尖塔が景観上の特色です。

 

 夕暮れになってソウル郊外に来ました。ビルにプロジェクションマッピングというのでしょうか、文字を映しだしています。ますます高層マンションだらけ。東海線の釜田付近もそうでしたが、未来都市的です。新興国なので、こういうところは日本より新しい感じがします。やはり格差が極端な国だなあ、という印象が強くなってきました。いつの間にか在来線に入り、漢江を渡って、19:41ソウル着。物足りませんが、このおかげで実質2日で釜山とソウルに行けます。実用的にはありがたいので仕方ありません。世間一般的には速いほうがいいのでしょう。

 

 地下鉄1号線ソウル駅から鍾閣駅へ。そこから歩いて、「ホテルビズ鍾路というところに泊まります。いつもは近くの仁寺洞のホテルだったのですが、今回逡巡しているうちに満室になり、近辺でそこより安いホテルにしました。ネット決済で3600円ぐらいです。行ってみると路地裏の古い建物のホテルでしたが、内部は改装されおしゃれ。日本語も通じました。部屋も個室で風呂もトイレもちゃんとしており、私には分相応です。ただ、窓が調子悪いのと、トイレットペーパーを流さないように断り書きがあり、これだけがおやおやです。

 

 夕食を食べようと思います。このあたりは楽園商街という道路の上につくられ、楽器店が集積しているというビルが目印です。ところがこれが微妙に曲がったかたちをしており、それで方角がわからなくなりました。西に向かっているつもりが、南に向かってしまったようです。仁寺洞に行こうとしたのですが、鍾路付近の屋台の飲み屋が並ぶあたりに出ます。屋台の飲み屋は微妙なので逡巡します。

 

 別の通りを歩いて往復し、入りやすそうな店でプルコギビビンバ定食を頼みました。確か7000ウォン。すぐ出てきて、感動するほどでもないですが、無難なおいしさという感じです。これまで肉スープ系ばかりだったのでその分点数が高くなります。ビビンバは金属のお椀に入り、(炭火)焼き肉は板の上に載って出てきました。どうもユクサムネンミョン(육쌈냉면)という店だったようです。

 

 迷った割には、ホテルの位置はすぐわかったのですが、方角を確かめるため、またウロウロ。地図を持ってこなかったのが失敗でした。コンビニに入ってマッコリという酒を買おうとします。1軒目にはなく、2軒目のセブンイレブンにありましたが、量が多すぎです。

 

 あきらめて韓国名物のオリオンチョコパイ「情」というのと、キットカットのパクリ菓子「キッカー」というものの緑茶味を買いました。まあどちらもおいしいです。昔、2000年代初めでも、韓国の菓子を食べると日本より明らかに品質が劣っていましたが、今はそんなことはありません。

 

 88年の初訪韓のとき、団体旅行の自由時間にどうしても汽車に乗りたくて、釜山から東大邱まで往復しました。そのとき、帰りがムグンファ号で、2ー3人掛けの混み合った、韓国独特の臭気のする車内で前の席から子供が顔を見せて、持っていたミルクキャラメルをあげたのを思い出しました。あのときのキャラメルは森永のキャラメルをオリオンがライセンス生産しているものでした。日本のものより固くて形がひしゃげており、だいぶ品質の悪いものでした。

 

 オリオンはその後チョコパイで有名になり、チョコパイは映画「JSA」でも韓国の豊かさをを象徴する菓子として使われたそうで、一方で森永のキャラメルは作らなくなったようです。今こうやってチョコパイを食べると、平成をまたいで韓国はこんなに変わったのに、私は変わっていないなあ、と思います。