写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

17  慶州駅が廃止されていた

  先日、旅行できないので、Googleストリートビューや韓国のDaumのロードビューを使ってあちこちをバーチャル旅行している、という話を書きました。

 

 この前は釜山の町並みを見て回ったのですが、今度は、また韓国、新羅の古都慶州でも見てみようか、と思って、何気なく慶州市の地図を開けたのです。ところが市内中心部を走っているはずの鉄道が見当たりません。おかしいな、と思って、「慶州駅」で検索をかけてみました。するとwikipediaのページが出てきたのですが、そこには驚いたことに2021年の12月28日に廃止された、と記載されており、衝撃を受けてしまいました。

 

 2019年に韓国に行き、大邱~釜山(釜田)まで、東海線という慶州回りの遠回りの路線に乗りました。このとき、あちこちで線路のつけかえ工事をしているのを見かけたのですが、慶州付近ではそのような様子がなく、市内中心部だからそのまま残しておくのかな、と思っていました。慶州付近の路線は、在来線のままなので、古い家並みや古墳などが車窓から望め、あまり見どころのないこの路線の中ではいちばん印象に残った区間でした。

 

 ところが、慶州駅だけでなく、慶州付近の路線が根こそぎなくなり、従来KTXなどが走っていた郊外の新線にある新慶州駅に在来線の列車も乗り入れるようになるとのことでした。ともに標準軌だからできるのですが、ずいぶん思い切ったことをするものだ、と思います。

 

 しかし、鉄道で慶州を訪れて観光しようとする人にはずいぶん不便になったと思うし、市内へ向かうために利用する周辺地元民も反対しなかったのか、不思議に思います。新慶州駅は市内から10キロほど離れているそうで、市内中心部にはバスかタクシーで行かなければなりません。韓国はバスが発達しているので、慶州観光をする人はバスか車で、と考えているのか、地元民もバスや車で用が足りているのか、それでも自分がこの線に乗った際には混雑して満席状態でしたし、誰も乗らないので廃止、という日本のローカル線問題とは事情がかなり違うはずです。

 

 全く不思議な路線付け替えで、日本ではちょっと考えられないことですが、韓国では以前にもいくつかの路線や町で大幅な路線付け替えや駅の移転が行われていたようです。全州駅などもかなり以前ですが、大きく移転したと聞いたことがあります。韓国は都市再開発などでも大胆な町並みの作り替えをやっていたりしますが、その結果、風情がなくなり、鉄道も町並みも無味乾燥になりがちです。

 

 経緯を説明している動画を見ると、慶州市内を走ることで騒音などの問題があり、旧線も1990年代に一度、市内を大きく迂回する不自然な線形に付け替えられていたそうです。そして今回の移設も、実は9年前に移設するはずだったのに工事が遅れてようやく2021年末に移設された、ということでした。旧線そのもの、あるいはその付近を複線電化するのは、遺跡破壊や風致上の問題があったようです。また、移設に反対があったと言う話は出てきませんでした。しかし、新慶州駅はこれまた遺跡や風致の影響を避けるため慶州市内からかなり離れたところに設置された、と聞いたことがあります。やはりどうも不便そうです。

 

 隣の仏国寺駅もなくなったのですが、仏国寺に歩いて行くのは難しい距離に位置していたものの、これまた鄙びた風情の駅だったので惜しいなあ、と思います。

 

 昔は「初めてなのに懐かしい」という感じだったのに、今や日本から見ると近未来に見えることもしばしばです。でも私は懐古趣味があり、古ぼけたものが好きなので、今回の変化も残念に思いました。