写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

05 2日目プユマ号(2019年3月29日)

 台湾を西部から南部へとたどり、南東部の台東につきました。開放的な駅で、新しいです。ここで1時間ちょっとあります。この地方都市の駅も自動改札。切符が回収されるのかな、と思ったら出てきました。トイレに入ったら「優良トイレ」とか書いてあって清潔でしたが紙が切れています。

 

 昼ですから、ここで弁当を買うことにします。ネットではここで「池上便当」という弁当を売っているということが書いてありました。もともと少し先の池上駅の名物だったそうなのですが、池上駅の立ち売りはなくなったそうで、停車時間も短く、今は台東で売っているとのこと。ですが見当たりません。「台鉄便当」ののぼりのある出店があるだけ。どこにあるのだろう、と探します。

 

 セブンイレブンにもなく、駅の構内(といっても開放的な駅なので屋外という感じ)のお土産店を覗いてもありません。この駅は南廻線が開通した前後に移転したらしく、レンタカー店が目立つぐらいで、町の中心街ではないようです。仕方ないので池上便当はあきらめ、台鉄便当の出店に行きます。台鉄便当の有名な紙箱入りの安い方はこちらが躊躇している間に売り切れ、高いプラスチックの丸い容器に入った弁当が売れ残っていて、100元でそれを買います。高いと言っても400円以下ですが。

 

 待ち時間に駅構内で弁当を食べている人が多いですが、せっかくの駅弁ですから、列車内で食べようと袋も買って持ち歩きます。釈迦(頭)という果物が名物らしく、こればかりを売っている店もありますが、大きな果物は買えません。仕方ないのでアイスクリーム屋釈迦味のアイスがあったので50元でそれを食べます。その奥に、お菓子屋があります。躊躇しつつ買おうと思ったら先客が買い占め、のこった同じ種類のお菓子20元を2つ買います。あとで列車内で食べたら、餅の部分は緑茶味でしたが、中身は日本の大福そっくりでした。

 問題の東海岸線~北廻線プユマ号に乗ります。細かいしつらえが日本より少し野暮ったい感じですが、新型特急にありがちの内装です。半年前に事故を起こしているので大丈夫かと思いますが、ちょっと心配でもあります。まあ、だいたい事故のあとは安全にことさら気をつけるでしょう。ネットで切符を買うと「自強プユマ号」となっていて、在来線特急「自強号」扱いですが、全席指定立席不可、一応「超特急」ということのようで783元。乗ってみるとやはり海側の窓側。ただしドア横です。425列車とのことでした。

 

 14:00ちょうど台東を出発。出発とともに弁当を食べました。「排骨飯」という骨付き豚肉弁当。味は結構いいです。ご飯の上に豚肉や野菜、さらに台湾人は煮卵がやたら好きらしく、茶色いゆで卵が載っています。列車が動いてから食べ出したのですが、これが揺れる揺れる、弁当が非常に食べにくいのです。この列車大丈夫かな、と改めて思います。在来線時代の青森~盛岡間の「はつかり」がやたら揺れたように記憶していますが、それを思い出します。無理矢理高速で走っている感じ。食べるのに必死で外を見る余裕がありません。

 

 ようやく食べ終え、外を見ると、幅が広くて白い石がゴロゴロしている河原に沿って走っています。どうもこのあたりは白い石がゴロゴロしている河原の中に細い流れがある、という感じの川が多いようでした。列車のアナウンスが中国語・英語のほか、明らかに中国語の方言とは違う、どうも現地のアミ族かなんかの原住民の言語でもアナウンスをしています。東海岸は原住民が多く、「プユマ号」も原住民族の「プユマ族」にちなんでいるそうです。中国語のアナウンスはさっぱり聞き取れません。
 
 天気は台東あたりから曇ってきて、小雨の降っているところもあります。さっきの南廻線に比べると陰鬱な感じ。花蓮という東海岸の中心都市付近では一部地下線になっていました。このあたりで日本家屋を保存して見世物にしているのも見かけたり、「自強隧道」という銘があるおそらく台東線がナローゲージ時代だった頃の廃トンネルも見えたりしました。あとは水田、袋をかけた果樹園があり、並行する道路があり、ガソリンスタンドが見えたり、という感じです。

 

 花蓮で結構乗降があったように思います。乗車率はやはり満席。日本人らしき人もいたような。で、ここから北廻線。南廻線に負けず劣らずの長大トンネルと断崖絶壁が続く、というのですが、快晴の南廻線を堪能したあとにどんよりとした曇り空の中を走りますからパッとしません。

 

 確かに断崖絶壁がありましたが、そのありようが室蘭本線長万部の少し先にある、静狩~豊浦の海岸と長大トンネルが続く区間に似ています。あそこの山を少し丸くして標高を高くした感じ。トンネルを抜けた礼文駅のあたりによく似た風景もありました。まあ、一般的には「よい景色」なのでしょうが、北海道から逃避しようとして来ているので、なんだかげんなりしてしまいます。自然豊かなところなのか、と思っていましたが、突然大きな工場か発電所だかなんだかわかりませんが、大きな施設が出現したりします。あと、このあたりからこれまで見かけなかった貨物列車とすれ違ったりします。

 

 宜蘭という町に近づくと、夕方なので、学校帰りの高校生を見かけたり、ステンレス製ロングシートの通勤列車を見かけたりするようになります。台北に近づいてきたなあ、まだ台湾旅行中なのですが、現実に戻されるのかあ、という気がしてきます。ただ、それは地図を持ってこなかったための早とちりでした。

 

 このあと海辺を走り、遠くに島が見えたりします。あれは沖縄の島かなあ、と思うのですが、こんなに近くできれいには見えないだろう、と思います。あとで地図を見たら違うようでした。この区間は夕暮れながらなかなかの景色でした。そのあと、また山間部の峡谷に入ります。昔の山陰線の保津峡あたり、あるいは高山線ほどではありませんが、ちょっとそれを思い出します。

 

 だいぶ日が暮れてきました。しばらくすると峡谷の中にマンションが出現します。どうやら台北都市圏に入ったようです。ずっと、どの辺が脱線事故現場なんだろうと思って車窓を見ていましたが、映像で見たような現場らしきところを見つけることは出来ませんでした。

 

 高架線を通り、今度は地下線に入り、台北着18:15で約12時間の台湾一周完了。駅ホームの自販機に「アスパラガスジュース」があります。宮脇俊三氏がかつてこれを買って飲んだら意外とうまかった、と書いていたので飲んでみたかったのですが、大混雑の終着駅ですからやめました。その後見かけることはなく、けっきょく飲みそびれてしまいました。