写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

11 3日目朝 トラック改造の簡易バスでマハーチャイへ(2020年1月9日)

 ワットシン駅で列車が止まり、やむを得ず列車を降りて他の人について歩き出します。

 

 ほとんどタイ人ですが、外国人と思われるのが私の他に3人。2人は赤い服を着た女の子と、白い服を着た中国系のような男のカップル。もしかしたら赤い服の方はガイドか何かなのかもしれませんが、関係は不明。赤い服の女の子はタイ語がわかるらしく、なにやらタイ人のおばさんに聞いています。カップルはそのおばさんについていきます。

 

 もう一人はひょろっとした30~40代と思われる欧米人男性英語圏の人のようです。その欧米人が白い服の中国系に「マハーチャイ?」「メークロン?」とか聞いて、2人で会話しています。マハーチャイというのはこの線の終点の駅。そういう名前だと認識せず、終点まで乗っていればよい、と思っていましたが、こんな状況になれば重要地名です。

 

 私も意を決して、この欧米人に「マハーチャイ?」「メークロンマーケット?」とか、聞きます。やはりそこまで行くようです。私も見失わないように彼らに必死についていきます。自動車がビュンビュン走る表通りに出て、しばらく歩き、バス停らしきところで皆さんが止まります。初めの人数よりずいぶん減っていました。大丈夫かな、と思います。何台か普通のバスやトラックの荷台を吹きさらしの座席に改造したような簡易バスも通り過ぎますが、皆さん乗りません。

 

 すると一台のトラックの荷台を改造し、左右に2列シートを置いたタイプの簡易バスが停まり、カップルや欧米人も含めて皆さんが乗り込みます。そんなトラック改造の簡易バス、乗るつもりもなかったし、行き先も値段もさっぱりわかりません。ですが、賭けです。みんな乗っているのだから、終点のマハーチャイまで行くのだろう、と解釈し、意を決して一緒に乗り込みました。この簡易バス、「ソンテウ」というそうですが、そのときはそんな名前知りません。

 

 本当に終点のマハーチャイまでたどり着けるのだろうか、むちゃくちゃ不安です。トラックの荷台に載っているようなものですから、吹きさらしでこれまた非常に怖いので、バッグと手すりを固く握りしめています。私とカップルは座っていますが、欧米人はステップのところで手すりを握って立っています。

 

 トラック改造の簡易バス、ソンテウ大通りを突っ走ります。結構なスピード。ですがこの大通り、幹線道路のようで、何車線もあり、整備されています。不安になりながらも景色を眺めていますが、列車の沿線風景と明らかに違います。植生は熱帯のもので、タイ文字があちこちにあり、新築のタイ風の立派な寺もあったりしますが、そういったものを除けば、日本の夏の郊外風景のようです。

 

 明るくてカラッとしているし、大きな店やなにかの施設があり、あとは空き地というか原野というか。だんだんとタイ、という国は旧来からのごちゃごちゃジメジメした世界と、新しく広く、カラッとしている世界があるのか、と感じるようになりました。表と裏、陰と陽、新と旧という「二面性の国」という印象を持ちはじめることになります。

 

 道路は高架区間もありました。渋滞区間もあり、そうかと思えば近代的な道路を吹きさらしの状態で突っ走る。行き先はわからないし、料金もわからない、時間も読めない。もう究極の緊張状態です。えらいことになってしまった、と思います。

 

 でも、こういうとき、私は引き返さないで突っ走るんだなあ、とも思います。夜までにバンコクのホテルに帰れなかったらどうしよう、タイ語もわからず、スマホがないので、今自分がどこにいるかもわからずホテルへの連絡もできません。ただ、お金だけはあるので、いざとなればタクシーに乗ればいいか、と思います。持っているお金だけが頼り。でも朝のタクシーのことを考えると、バンコクまで行きたい、という意思が通じるかなあ、ということも不安に思います。やはりアクシデントが起きたときはスマホがないとダメですね。

 

 とにかく、不安と緊張のかたまり状態になりましたが、次第に市街地の様相になり、仏具店が見えたりします。左に曲がり、市街地に入り、しばらく走って簡易バスが停まります。目の前が写真で見たマハーチャイの埠頭でした。マハーチャイ駅から埠頭までは少し歩くのですが、埠頭の目の前につけてくれたので、すぐ渡し船に乗れます。

 

 やった、なんとかなったぞ、とホッとします。車中で隣のタイ人の客が20バーツ札を出して手に持っていたので、20バーツあれば大丈夫か、と思い、ふきっさらしで風が強い中、飛ばされないように慎重に財布から20バーツ札を出しておきました。

 

 本当は荷台を降りて運転手のところへ行き、乗った区間を申告して料金を払うシステムのようですが、タイ語も全くわかりませんし、どこから乗ったのかもさっぱりわかりません。雰囲気からして20バーツ以上にならないだろう、と思ったので、20バーツ札を運転手に押しつけてOKマークをします。運転手はタイ語で何か言いましたが、怒っている感じではなく、おつりをだすために何か聞いてきたような雰囲気でしたので、むしろ払いすぎだったのだろうと思います。

 

 時間も9時40分ごろ。列車のマハーチャイ駅到着予定時刻の8:39よりは1時間ほど遅れましたが、1本早い列車に乗ったので、渡し船に乗って乗り継ぐメークロン線の10:10分の列車に間に合いそうです。我ながらよくやったと思います。