1980年代、私は「ザ・ベストテン」が大好きでした。一方で海外放送聴取「BCL」もやっていました。こちらは1970年代が全盛だったようで、周囲にやっている人はいませんでした。そして、韓国KBS「ラジオ韓国」日本語放送では「韓国歌謡トップテン」という番組をやっていました。韓国のテレビでやっていた番組のヒットチャートをそのまま紹介していたようです。
当時、韓国歌謡などほとんど知られていない状態で、今の若者がK-POPを好んでいる、ということに隔世の感を覚えるのですが、1980年代、特に前半は「釜山港へ帰れ」がヒットしたくらいで、演歌の一部が日本で知られていただけ。今となっては何で隣国の歌がこんなにも知られていなかったのだろう、と不思議なくらいです。
ということで、「ラジオ韓国」から流れてくる韓国歌謡のヒットチャートと、たまに韓国の文通相手が送ってくるカセットテープが、当時数少ない韓国歌謡の情報源でした。
いくつか気に入った曲もできたのですが、歌手名などは韓国語読みなのであまり聞き取れず、曲名は日本語で紹介してくれるのですが、原題がわからず、という状況でした。
そんな中で印象に残った一曲がこの曲。ユン・スイルの「美しい」という曲です。
チープなサウンドですが、むしろそれが新鮮でした。当時の韓国は全斗煥の軍事政権下で、自由もなく、息苦しい社会だったのではないかと思います。経済は高度成長下にありましたが、まだまだ当時の日本と比べると貧しかったのでしょう。
そのような制約された状況の中で、精一杯の青春を謳歌している、という気分を感じさせる曲です。韓国語の歌詞はそうでもないでしょうが、曲の雰囲気はバイクで韓国の「うら寂しい」浜辺を突っ走るような疾走感があります。
ユン・スイルという歌手の代表曲は「アパート」という曲で、文通相手から送られてきたテープにはこの「アパート」が入っていたのですが、この「美しい」の方が気に入っていたので、後で別の人から「美しい」の方を入手しました。「美しい」の原題が「アルムダウォ」である、ということを調べるのに苦労した覚えがあります。
いま「아름다워」で検索すると、若い歌手の同名異曲がいくつか上の方に出てきますので、「ユンスイル(윤수일)」と歌手名を追加して検索しないと出てきません。若い人の歌と比べると、韓国はずいぶん変わったな、と感じさせられますが、私にとっての「아름다워」はこの歌です。
歌の記事はここでいったん打ち止め。また折に触れて思い出の曲について書く機会ができればいいな、と思っています。