写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

31  川中美幸「ふたり酒」 

 今回の歌シリーズ、鬱で自殺した韓国の歌手の歌、癒やし系音楽と続いて、突然日本の演歌、一見脈絡なさそうですが、「生きづらさ」が共通テーマになってしまいました。

 

 この歌、1981年、というより演歌ですから昭和56年という年代の方がしっくりきますが、この年のヒット曲。中年になった私ですが子供の頃から比較的演歌好きです。ですが当時この歌に格別の思い入れがあったわけではありません。ヒットしましたから、何かの拍子にメロディーが鼻歌になって出てくる、と言うことはあっても、それは多くのヒット曲と同じ、ということでした。

 

 ですが大人になると、何かとうまくいかなくなることが多いものです。そんなときこの歌の冒頭のフレーズ「生きていくのが辛い日は…」というのが口をついて出るようになってしまいました。

 

 ところが続きの歌詞「おまえと酒があればいい」という部分は私の置かれた現況と全く違います。私はひとり者ですし、酒を飲んで憂さ晴らしするようなこともしていません。無理矢理飲んでいた時期もありましたが、それで憂さ晴らしができるか、というと、そうはならなかったように思います。やはり鬱になるときはその原因が去ってくれないといけないのであって、私の場合、酒を飲んで解消するものではないようです。

 

 「苦労ばっかりかけるけど 黙ってついてきてくれる」などという二番目の冒頭のフレーズは、いかにも「昭和の夫婦」然としています。今どきこういうカップルがいるのでしょうか。

 

 「つらい涙にくじけずに 春の来る日を」という歌詞には共感しつつも、でももうこの年齢ならだめかなあ、もう春は来ないのかなあ、という気もしてきます。そして最後の「おまえとふたり酒」というのはまた自分とは縁のない世界です。要するに歌詞の「人生の辛さ」の部分には共感しつつ、それに耐えて解消しようとする「ふたり酒」の部分には縁がない、ということなのですね。

 

 昭和の終わり頃、「演歌離れ」について、演歌作家であった誰かが、「年齢を重ねて人生の辛さ苦しさがわかるようになれば演歌に戻ってくるようになる」という主旨のことを言っていた覚えがありますが、今、中年になった私にとっては、確かに人生の辛さや苦しさはわかるけど、だからといって夫婦の絆や酒、というのは違うかなあ、というのが実感です。ですから冒頭の「生きていくのが辛い日は」が口をついて出てきても、その後が続かない、そういう人生になってしまいました。平成を経て令和になりましたが、若い人が中年になってもなかなか演歌の世界に行かないのは、こういうところにあるのかも知れません。

 

 では結婚すればよかったのに、と思われるかも知れませんし、この年になってもいわれることがあります。半年ほど前に続けて3回もそんなことを言われてびっくりしてしまったことがありました。私は「生涯未婚率」の統計に入れられる年齢に達しているのですが、結婚観については機会を改めて書くことにしましょう。

 

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