写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

91  金沢諸江屋の「加賀宝生」

    先日、「日本三大銘菓」を食べた、という記事を掲載しましたが、そのときに落雁の魅力に改めて目覚め、また札幌三越の「菓遊庵」という全国の菓子を集めたコーナーに出かけてお菓子を買ってきました。今回は金沢諸江屋の「加賀宝生」というお菓子です。

 

 他の落雁にも色気があったのですが、やはり金沢に縁があるせいか、まずは金沢の有名な落雁処である「諸江屋」のお菓子に目をつけて買ってきました。

 

 私が金沢に住んでいた頃、祖母が「森八」信者だったようで、いつも「森八」の菓子ばかりを食べていたように思います。ですから他の店の菓子を食べた記憶があまりありません。「森八」は加賀藩の御用菓子処で、創業三百余年といいますから、老舗の名門菓子店が多い金沢でもダントツの格式だったのでしょうが、「諸江屋」だって江戸時代創業の老舗です。ですが大正生まれの祖母からすればまだまだ、というところだったのでしょうか?

 

 それはともかく、金沢の菓子を食べている割には諸江屋の菓子を食べる機会がほとんどないまま、ここまで来てしまいました。今年の正月にやはり三越で「福梅」を買った際にこの「諸江屋」の製品でしたが、ここはもともと落雁の専門店。今度は是非落雁を、と思って買ってきました。

 

 買ってきた菓子は「加賀宝生」という名前です。金沢は宝生流能楽の盛んな土地だそうで、謡曲が空から降ってくる」といわれたそうです。植木屋でも謡を歌うこことができたので、「空から降ってくる」のだそうですが、私の頃にはさすがにそんな経験はありません。でも、そういういわれを菓銘にしたようです。

 

 肝心の菓子ですが、白い生落雁で黒い羊羹を挟んだものです。生落雁というのは、干菓子というより、水分が多いのでしょう、賞味期限も短いようです。これに羊羹を挟んでいます。

 

 食べてみると、しっとりなのにシャリシャリ感もあり、独特の食感です。先日の日本三大銘菓「山川」と「越乃雪」を合わせたような感じ。それにわずかながら塩を加えているようで、かすかにしょっぱいです。しかしこれがいい仕事をしています。塩を含めることで甘みを引き立たせているのでしょうね。

 

 例によってお抹茶を点てて食べてみました。私の日頃の生活はすさんでいますが、こういう高級和菓子をお茶と一緒にいただくと、えもいわれぬ幸福な気持ちになれます。

 

 まあ、こういう贅沢をすると、口が肥えてしまい、その辺にあるスーパーの駄菓子のような和菓子では満足できなくなるので、それが本当に幸せにつながるのかどうか、わかりませんし、一方で、庶民のくせにこんな高級菓子をデパートで買うことができるのは、ひとり暮らしで、かつ、日々嫌々ながらも仕事をしている、すさんだ生活の代償なのだ、とも思うのですが、こんなすさんだ日々の生活を癒やすにはこんなものでも食べるしかないのでしょうかね?あれこれ考えながら、ひとり占めして食べてしまいました。