写真のない旅行記

カメラを持たずに旅した記録です。雑記も載せています。

41  ジャニーズたたきへの違和感

    このところの世間の話題と言えば、ジャニーズ事務所の創設者、ジャニー喜多川氏の少年性加害事件でしょう。ですが私はこの問題の一連の流れに強い違和感を持っています。

 

 そもそもジャニー氏が数年前に死んでから、イギリスのBBCが告発番組を報道し、それで火がついた、というわけですが、なにを今さら、という印象が強いのです。

 

 かなり以前からジャニー氏がジャニーズJr.の少年やタレントに性加害をやっている、という告発や噂はあって、私も噂話のレベルでは知っていました。

 

 それならばマスコミは氏が生きているうちに告発すべきだったでしょう。ただ、ジャニーズ事務所が男性アイドルの独占企業で、その弊害が以前から指摘されていたところではあります。そのひとつとしてジャニー氏の性加害をテレビが告発できなかった、ということはあるでしょう。

 

 一方、新聞にはそこまでの圧力や腐れ縁はなかったと思いますが、こちらはいわゆる「芸能ネタ」扱いでこれまた軽視してきたのでしょう。一部の週刊誌や書籍での告発があったわけですが、「週刊誌ネタ」扱いで社会問題化しなかったわけです。

 

 こういう状況で来たところに、ジャニー氏が死んだあと数年たってから法人としてのジャニーズ事務所や後継者の藤島ジュリー景子氏を叩き、タレントをテレビやCMから閉め出すのはおかしいと思ってしまうのです。結果的にジャニーズ事務所は廃業まで追い込まれ、一方で新会社を作るという方針のようですが、ちょっと叩かれすぎ、と思わざるを得ません。

 

 藤島氏はジャニー氏の姪で後継者、という微妙な立場ですから、生前にいさめることなど普通に考えて当然できなかったと思います。それを叩くのはいかがなものか、と思うのです。また、私は「タレントには罪はない」という立場です。 

 

 私は少なくとも現在のジャニーズ事務所で起きた事件ではないのに、なぜ今の経営陣が批判に晒され、責任を負わされるのか、いぶかしく思います。

 

 今まで抑えられたものが噴出したのだとは思いますが、それにしてもジャニー氏の死後に外国メディアが報道すると堰を切ったように批判を始める、マスコミはずいぶん卑怯だな、と思います。

 

 ジャニーズ事務所と同様、あるいはそれ以上にメディアに責任があるのに叩く資格があるのか、と思ってしまいます。ことの性質上、新聞が主導してキャンペーンを張る、ということは考えにくい案件ではありましたが、テレビなどは相当責任があるはずです。

 

 記者会見が荒れたという話も聞きますが、反省すべきは生前から告発、さらには裁判があったにもかかわらず、黙殺していたマスコミであり、彼らにタレントや後継者を叩く資格はないでしょう。むしろ藤島ジュリー氏や東山紀之氏より責任は重いと考えます。

 

 この問題は、ほぼジャニー氏個人の性的嗜好の問題であり、ジャニーズ事務所の組織的犯罪ではないわけです。ジャニー氏は少年を見る目があり、またそれが過剰な故におこった問題なのでしょう。それがジャニーズ事務所の栄華を作り上げたのでしょうが、今頃死んでしまったジャニー氏を叩くのであれば、たとえばかつて国民栄誉賞を受けた森繁久弥氏はセクハラの常連だったというし、それなら森繁氏の国民栄誉賞を剥奪するのか、そういうレベルと同じ話だと思うのです。

 

 ここまで書くと、話は飛躍してしましますが、歴史問題とも通底する話になって、戦争責任や植民地支配に現在の我々は責任があるのか、謝罪しなければならないのか、という議論が時々起こりますが、加害者が死んだあと、被害者だけが生きている場合、法人(国家や団体)や後継者に道義的責任があるのか、法律論的にはどうかよくわからないのですが、なんだかこの手の問題と話が似てきたなあ、とは思うのです。

 

 もちろん被害者は気の毒ですし、二度と起こらないでもらいたいものですが、かつての価値観ではそれが看過されてきた、それが許されなくなった、時代の変化もあると思います。これも歴史問題と似たところがあります。

 

 まとまりがなくなりつつあるので、結論をもう一度書きます。死んだ人間の個人的犯罪を今の組織批判にすり替えて叩く、この問題の責任者はもちろん故人のジャニー氏ですが、その次に責任があるのはこの問題をかつて黙殺し、当事者が死んで外圧がおきると途端に騒ぎ出すマスコミだと考えます。偉そうにジャニーズの人達を攻撃していたようですが、マスコミこそこれまでと現在の報道姿勢を猛省すべき、むしろ自分たちもこれまでの報道姿勢を謝罪すべきでしょう。どの顔して追及をしているのか、とさえ思います。