旅行記の連載で遅くなってしまいましたが、先頃、韓国で総選挙がありましたね。結果は野党の「共に民主党」が圧勝、尹錫悦政権の与党、「国民の力」は負けてしまったということです。結果を詳細に検討した訳ではないので「感想」という程度ですが、感じたことを書き留めておこうと思います。
現政権は保守派で、旧軍事政権からの流れをくむ政党です。一方、野党で前文在寅政権の与党だった「共に民主党」は、リベラル派、ということになっています。
そういう政策的違いがあるのですが、韓国紙のサイトを見て気づくのは、そうした政策の違いよりも、韓国が地域感情で分断されている、という昔からの「積弊」がいまだに続いている、ということです。
韓国の国会議員選挙は一院制で、小選挙区制と比例代表を組み合わせた選挙制度になっているのですが、新聞社サイトのどの党がどの地区で優勢だったか、を落とし込んだ韓国地図をみると、東西で色分けがくっきりと分かれています。
つまり、西半分は「共に民主党」、東半分は「国民の力」とはっきり分かれているのです。西半分はソウル・京畿道・忠清道・全羅道、東半分は江原道・慶尚道ですね。
特に全羅南道と慶尚北道は顕著で、二大政党であるにもかかわらず、前者では「国民の力」、後者では「共に民主党」が候補者すら立てられない選挙区があるようです。
地方では色分けがはっきりして、選挙結果が見えている、ということで人口の多い首都圏での選挙結果が勢力を左右することになるのですが、といってもソウル周辺はだいたい以前からリベラル派が強い傾向があります。ということで東西で色分けがくっきり分かれるのですね。
古代朝鮮半島は高句麗・百済・新羅の三国に分かれていたのですが、北朝鮮が高句麗、韓国の西半分が百済、東半分が新羅だったことを考えると、現代韓国も新羅と百済に分かれているようにも思えます。以前ほど地域感情の話は聞かなくなりましたが、それでも政治面ではまだまだ地域の色分けが根づよく残っているようですね。
実は比例代表では、意外なことに小選挙区では惨敗した「国民の力」の方が第一党でした。というか、なぜか韓国では小選挙区と比例代表の党名が違うのですね。「国民の力」系が「国民の未来」、「共に民主党」系が「共に民主連合」になっています。でも少数政党の「改革新党」はそのままの党名です。これはどういう事情なのでしょうか?
ちょっと調べてみたのですが、韓国の比例代表制は小選挙区で議席獲得数の多い大政党に不利な制度になっているそうで、二大政党はそれぞれ「衛星政党」をつくっているらしいです。不思議な制度ですね。
また、曺国元法務部長官がつくった新党の「祖国革新党」は、比例代表では健闘していました。この人、娘の不正入試のスキャンダルがあったはずですが、それでも人気があるのですね。これも不思議。
地域別の小選挙区の結果を見る限り、韓国では小選挙区制より比例代表制に移行した方が政治対立が安定するのかな、という印象を受けました。
ですが、韓国にしろ台湾にしろ、ややリベラル派優勢の二大政党制が確立されているのに、日本はなかなかそうならないですね。日本の政党政治も不思議なのかも、と思います。