1980年代までは歌のことに詳しい、と思っていた私ですが、1990年代になると、就職などに伴い、歌謡曲に疎くなっていきます。そして今、新しい歌はほとんどわからなくなっているわけですが、youtubeで昔の歌を見て新鮮な発見をすることがあります。日本の歌ですらそういうことがありますから、韓国の歌、となるともう一段の新発見をすることがあります。
80年代は韓国の国際日本語放送が唯一の韓国歌謡の情報源でしたが、90年代の半ばになると韓国はじめアジアの歌が「発見」されて、一時「POP ASIA」という雑誌も売られていました。
それでも私にすれば、その雑誌と相変わらず国際放送だけが情報源でしたから、それぞれの歌手が歌っているところを見ることはできませんでした。90年代は訪韓できなかったので、生で韓国テレビを見る機会もありませんでした。
ということで、今、youtubeを見て「そういえばこんな歌があったなあ」と思い出す程度なのですが、その一つが今日のTWO TWOの歌です。
94年の歌のようです。90年代になると何年の流行歌か、よく覚えていません。曲名も知らないままでした。ですが先日、youtubeで偶然見つけ、メロディーと歌手名だけが記憶にあって懐かしさを覚えた、という次第です。
この「TWO TWO」というグループ、男女混成の4人組。無表情の女の子と、背の高いひょろっとした男の子が歌っています。この男の子が「今どき男子」のはしりで、ファッションもパステルカラー調。「かっこよさ」よりも「かわいらしさ」を強調した感じです。ダンスもうまいのですが、これまた、かっこいい、というより、かわいらしさを強調している雰囲気です。
この歌をこんな子が歌っていたんだ、韓国も90年代半ばになると芸能人とはいえ、このような男の子が出現していたんだ、と今になって感慨にふけります。男子がイケメンになると先進国、というのが私の持論ですが、韓国はこのあたりで先進国になったのだな、と改めて気づかされます。日本ではこの頃、韓国をまだ「中進国」とよんでいましたが、歌に関する限り、もうこの頃には日本と遜色のない段階に達していたのでは、と思わせられます。
「今どき男子」がニコニコとポップな歌を歌っている。高度成長下の韓国、豊かさの中で育った世代が出現し始めていたのだな、と思わせられる映像です。このときの彼らは希望に満ちていたのでしょう。
そのあとで、2010年代になってからの映像が出てきました。なつメロ歌手として出てきたのでしょう。ところが、その映像を見ると、女の子はそれなりに年齢を重ねていましたが、男の子が妙に若い。年をとらなかったのか、と思って、よく見たら別人でした。
気になって調べてみると、この男の子の方は、キム・ジフンという名前でした。結婚と離婚の末、2009年には薬物で捕まり、2013年にうつ病の末自殺したのだ、という衝撃の事実がわかりました。2010年代の映像の男の子は「代役」だったのです。
90年代の映像を見ると、明日はきっとよくなる、と希望に満ちていたように思えますが、先進国化した韓国で生き抜くのは難しいことなのでしょう。韓国は芸能人の自殺が多い国です。
歌詞を聴いてわかるほどの語学力がないので、改めて調べて見ると、「1と2分の1」とは、別れた彼女が彼氏といるところに出会ってしまう、という切ない歌詞のようです。曲調とは裏腹に、この男の子、切ない人生を送ってしまったのですね。